一階線形常微分方程式の解法について以下にまとめる。
常微分方程式なので求める関数yは1つの変数xのみに依存し、線形なので導関数について一次式(つまり、重ね合わせの原理が成り立つ)であり、そして一階なので一階微分である。以上のような微分方程式をまとめると(1)のように表すことができる。
ここで、f(x) = 0の場合は同次系(homogeneus), そうでない場合は非同次系(Non-homogeneus)という。なお、f(x) = c、と定数となる場合も非同次系に含める。このような一階線形常微分方程式の一般解を求める問題では、まずは同次系か非同次系かに着目する。なぜなら、非同次系の一般解は線形性による重ね合わせの原理により、同次系の一般解(general solution)と, ある非同次系の特殊解(particular solution)の和でとなるからである。式に直せば、同次系の一般解 、非同次系の特殊解 とすると以下の式(2)のように表すことができる。
$$ y(x) = z(x) + u(x)$$これで、非同次系の一般解を求める方法を同次系の一般解・非同次系の特殊解の2つの要素に分解することができた。以下では、それぞれの解法について説明する。なお、もともとの微分方程式が同次系だった場合は、1の方法のみで解くことができる。
同次系線形微分方程式の一般解を求めるー変数分離ー
\(y’ = dy/dx \)であることを考えれば、\( 1/ydy = a(x)dx\)の形に直すことができるので、あとは両辺の不定積分により
$$ \log{|y|} = -\int a(x) dx + c $$が得られ、自然対数を取ると、
$$
y(x) = C\exp{(-\int a(x) dx)}
$$
と、このように微分方程式の解の関数\( y(x)\)が得られる。ここで、積分定数が\( C = \pm \exp{(c)} \)と変換されたことに注意されたい。結局、この定数は初期条件により一意に定まるので見やすい形にするための変換を行う上では何も問題がないのである。
例として、もっとも簡単な微分方程式
$$ y’ -y = 0, y(0) = 1 $$について、公式をあてはめると、
$$ y(x) = 1 \cdot \exp{x}, (C = 1) $$といったように解析解が求まる。この解析解とルンゲクッタ法による数値解析の解を比較したものを以下に示す。

非同次系線形微分方程式の特殊解を求めるー定数変化法と未定係数法ー
上で示した通り、非同次系の線形微分方程式の解は同次系の一般解\( z(x) \)と非同次系の特殊解\( u(x) \)の和で表すことができる。本項では、非同次系の特殊解を求める代表的な2つの方法、未定係数法と定数変化法について述べる。基本的な考え方としては、定数変化法の方がより一般的な解法ではあるものの\( f(x) \)と指数関数の積分計算を伴うのに対し、未定係数法では恒等式の比較による連立方程式で解けるので、外力項\( f(x) \)の形が、多項式、指数関数、三角関数いずれかの和で示されている場合は未定係数法を用いて解いた方がよい。具体例を混じえながらこの2つの方法にについて以下でそれぞれ説明する。
〇未定係数法 Method of Undetermined Coefficients
未定係数法では、特殊解\( u(x) \)を外力項\( f(x) \)の形に応じて定義する。あとは\( u(x) \)を解くべき微分方程式に代入すれば、導関数における恒等式が得られるので、それをもとに係数を決定する方法である。\( f(x) \)の種類とそれに対応する\( u(x) \)をまとめた表を以下に示す。
f(x) | u(x) |
\( k\exp{(rx)}\) | \( C\exp{(rx)} \) |
\( kx^n \) | \( K_n x^n + K_{n-1}x^{n-1} + … + K_0 \) |
\( k \cos{(\omega x)},k \sin{(\omega x)} \) | \( K\cos{(\omega x)} + M\sin{(\omega x)}\) |
\( k\exp{(\alpha x)}\cos{(\omega x)}, k\exp{(\alpha x)}\sin{(\omega x)} \) | \( k\exp{(\alpha x)}\left( K\cos{(\omega x)} + M\sin{(\omega x)} \right)\) |
〇定数変化法(Method of Constant Variation)
定数変化法では同次系の一般解 \( y(x) = C\exp{(-\int a(x) dx)} \)を求めたときに得られた積分定数Cを\( x\)の関数\( C(x) \)と置き、式(1)に代入することで以下の公式が得られる。
$$ u(x) = \exp{(-h)} \left [ \int \exp{(h)}f(x)dx + C \right], h = \int a(x) dx $$これは、非同次系の特殊解を得るためのまさに公式であるのだが、見た通り複雑な積分計算をする必要があるため。\( f(x) \)が未定係数法のパターンに沿ったものであれば未定係数法で解く方が無難であろう。
例題
以下の非同次系一階線形微分方程式の一般解を求める
$$ y’ – 2y = \sin{(x)} $$
式(2)にしたがい、同次系の一般解\( z(x) \)と非同次系の特殊解\( u(x) \)の足し合わせにより、一般解\( y(s) \)を求める。同次系\( z(x)’ – 2z(x) = 0\)の一般解はすぐに
$$ z(x) = C\exp{(2x)} $$であることが理解できよう。ただし、Cは積分定数である。
次に非同次系の特殊解を未定係数法により求める。外力項\(f(x) = \sin{(x)} \)であるから、表1に従い \( u(x) = A\cos{(x)} + B\sin{(x)} \)と置き、微分方程式に代入することにより、
$$ (A + 2B + 1)\sin{(x)} + (2A – B)\cos{(x)} = 0 $$が得られる。\(\sin{(x)}, \cos{(x)} \)は線形独立、つまり、
$$ \begin{eqnarray} A + 2B +1 = 0\\ 2A – B = 0 \end{eqnarray} $$あとはこの連立方程式を解くことでA,Bが得られ、非同次系の特殊解\( u(x) = -1/5\cos{(x)} – 2/5\sin{(x)}\)が求まる。